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March 06, 2007

昆布の佃煮

Dsc00130出汁をとった後の昆布を捨てられない。その度、煮るのも大変なので、今年に入ってからはある程度の量になるまで冷凍庫に入れておくことにした。今日は久しぶりにお店がヒマだったので冷凍庫の掃除をした。それでビニール袋に入って保存されていた昆布をひとまとめにして煮ることにした。醤油とみりんとお酒でコトコトと煮込んだ昆布の佃煮。夏の終わりに塩漬けにし冷凍した穂紫蘇を最後にふり入れて、紫蘇昆布にした。
厨房では食材をできる限り捨てないように心がけている。煮物の時はそのまま使うけれど、酢漬けにする時は味を染み込みやすくするために大根やカブの皮をむく。その皮も繊維を断つように斜めに切って味噌汁の具にする。サツマイモやジャガイモなど皮ごと使えるものはそのまま使う。ブロッコリーやキャベツの芯などは冷蔵庫で保存しておきスープやカレーを仕込む時、みじん切りにして一緒に煮込む。
材料を使い切るということは手間がかかるということだ。ましてスタッフの人件費まで考慮すると、捨ててしまった方がすぐに片付くし経済的な場合もたくさんある。だけど無駄なく食べさせていただくことを前提に料理を作っているのだから、手間ヒマを惜しんではいけないなあと思う。
ほとんどテレビを見ない私だが昨夜は珍しくある番組に釘付けになってしまった。「おいしさを待ち続けて~料理家辰巳芳子の四季~」。今月、店にお迎えする船越康弘さんと並んで、私が今、もっとも尊敬する料理家の一人だ。辰巳さんの命をはげますスープは滋養たっぷりで深い祈りと共に作られている。人参スープを一例にその作り方の一部が番組で紹介されていた。人参は5ミリの厚さに切り揃え炒めながら、時々鍋にフタをして蒸す。そしてフタを開ける時は、内側についている水滴をこぼさないように、鍋の上でフタを垂直に起こし、水滴を真下に垂らしながら蒸し炒めをしていく。水蒸気の一滴一滴にまで気を配り、無駄にしないよう丸ごと旨みをスープの中に封じ込めようとする辰巳さんの作り方。その道を極めた方の料理には何か神々しいものを感じる。そして素材も人間も何でもみなよくなる方向に進んでいくものだと優しく語る。その命の方向性を信じて待つということ・・・辰巳さんの何気ない言葉の一つ一つを聞きていたら泣けてきた。
誰かに喜んでもらえるように料理を作る。美味しいものを美味しいねと言いながら一緒に食べられることの幸せ。心をほっとさせてくれる料理たち。一日の仕事を終えて食卓についた時、食べ物を通して私たちは明日への生きる力をいただく。その小さな毎日の営みを大切にありがたく思えることが、幸せの基本(根源)なのかもしれない。以前、ブログに書いた辰巳さんの最新の著作「慎みを食卓に」の最初に書かれていた言葉を改めて思い出す。
「根源から離れぬ者は簡潔に歩めます」・・・私は今、根源というものを学ばせていただいているのだと思う。

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Comments

いちさんありがとう。
今、私は心をこめて、気持ちを安定させながら料理を作らせていただくということの修業をさせていただいているんだなあと思います。素材に感謝しながら、優しい気持ちで作ったご飯は優しい味になります。イライラして作ったご飯はしょっぱくてどこかどんがった味になります。料理人はだから、いつも穏やかでいなくてはならない・・・。
私自身は短気でせっかちな人間なのですが、少なくとも厨房にいる時は、調和と安定を目指して淡々とやっていけたらというのが目標なんですよ。少しずつ、変わっていけたらいいなあと思っています。

Posted by: 風楽 | March 07, 2007 at 08:37 PM

お久しぶりです。
私もその番組を観てグッときてしまいました。

料理をする時に素材に感謝し、美味しくなるように
愛情をたっぷり込め、手間隙を惜しまず作らなきゃ!と
またまた反省したのでした。

ちょっと手抜きをしたり、慌てて作ったり、
気持ちが入っていないと美味しく感じられなくなりますから、
正直ですね。

Posted by: いち | March 07, 2007 at 12:01 PM

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Tracked on March 07, 2007 at 12:15 AM

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