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December 27, 2010

トゥガナンのダブルイカット

バリに行った最終日。12時にチェックアウトした後、次の日の明け方1時の飛行機で帰るので、ほぼ12時間、時間があった。ステイしているヴィラはウブドの郊外で周囲には何もない。出発までの時間をどう過ごすか考え、最後の日だけ車をチャーターすることにした。荷物を全て車に乗せてウブドから1時間半ほどの場所にあるトゥガナンという村に行った。
バリアガ族と呼ばれるバリの原住民たちの住んでいる昔ながらの村だ。バリヒンドゥーの中でも独自の戒律が残っており、未だにこの村人は他の村の人間と結婚してはいけないそうだ。古い石畳の坂の両脇に小さな家々が並んでいる。ここは「グリンシン」と呼ばれるダブルイカットが作られている村だ。
グリンシンとは「無病息災」を意味し、魔よけのために身に着ける長い布のことを言う。色彩は生成り、ベージュ、えんじ、茶色、こげ茶色をベースにマカデミアナッツやタマリンドウ、木の皮など自然界にあるもので染め上げられているのだが、一度では色が出ないため何度も何度も染め直しをするという。大昔は赤(えんじ)の色を出すのに人間の血で染めた時代もあったそうだ。魔よけの布なので、万が一体の具合が悪くなった時はグリンシンの糸を引き抜いて飲み込むとよくなるという言い伝えもある。
イカットとは経糸か横糸のどちらか一方のみを染めて織る絣だが、ダブルイカットは経横両方の糸を染めてから織ったものだ。経と横の柄を合わせながら織るので、ものすごく高度な技術を要し織るのにも時間がかかる。出来上がった布はほぼ裏表が同じ柄に仕上がり、何とも言えない風合いを持っている。
また専用の大きな織り機があるわけではなく、「いざり織り」と呼ばれる方法で経糸は織り子の座った体に巻きつけられている。そのため織り子の体の引き具合によって糸の張り方も変わってくる。今も家内工業的に生産されており、それぞれの一家に一人か二人の織り子がいて、毎日少しずつ織っているのだが、気の遠くなるような作業だ。
そのためダブルイカットは生産現場であるトゥガナンで買っても最低1m50ドルとかなり高価。でもこれが市内の店にでると倍以上の値段になってしまうので、買うならこの村がいい。
私は本物のダブルイカットが見たくて仕方なかった。アジア雑貨の仕事はもうやめてしまったけれど、元々織りや染めなど手仕事としてのテキスタイルが大好きなのだ。だから仕事を離れた今でも織りの生産現場にはとても興味がある。
いざ村に着いたらものすごく激しいスコールが降ってきた。足元も体もかなりぬれてしまったけれど、雨にけむった古い村の佇まいはものすごく風情があって、そこにある一本の木さえ絵になっていた。
雨の中、村にある店を回りながらダブルイカットの布を見せてもらったら、何と私もダブルイカットの布を持っていることがわかった。もう10年近く前にある方からバリのお土産にいただいたのだ。確かその方も「とても高価な珍しい布で、病気になったらこの布の糸を飲み込むようにと言われた」と話されていたのを思い出した。私の扱うアジア雑貨はタイやラオスが中心でバリはなかったので、ダブルイカットについては何も知らなかった。その価値もわからないまま、色がキレイだったので、ずっとスカーフとして愛用していた。
結局、トゥガナンで迷った末、一つだけダブルイカットを買った。そして家に帰ってからスカーフ入れの中から、かつていただいたダブルイカットを取り出して、アイロンをかけた。
そして買ってきたものと並べて布かけ棒に下げた。よおく見ると味わい深い布だなあと思う。生産現場に行って選んできたものは、作り手の思いがわかるだけに余計愛着がわく。
古民家の座敷にもよく似合う。いつか具合が悪くなった時は私もこの布の糸を一本引き抜いて飲み込むことにしよう。でもそんな日が来ることのないように願いながら、ずっとこの布を愛でていたい。部屋に布があるとほっとする。また一つお気に入りのスポットができた。
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