食堂かたつむり
私の大好きな本の一つ「食堂かたつむり」をもう一度読み直した。何度読んでも心がほっと温かくなる本だ。小川糸の作品は以来、ずっと読んでいるけれど、あっという間に私の好きな作家のひとりになってしまった。
ある日、仕事から帰った倫子の部屋はもぬけの殻。一緒に住んでいたインド人の恋人が何もかも持って出て行ってしまったのだ。残されたものは祖母から受け継いだ糠床だけ。ショックで声を失った倫子は何年ぶりかで故郷に帰ることにした。
ハチャメチャに生きている母とは折り合いが悪かったが、敷地内の物置小屋を改装して小さな食堂を始めることにした。お客は一日一組だけ。メニューはない。
倫子が料理をする前には儀式がある。食材を両手でくるんで抱くのだ。そして彼らの声に耳を傾けて、どう調理してほしか語りかけてくれるのを待つ。その後、料理の神さまにお祈りをしてから仕事に取りかかる・・・。
やがてできあがった食堂で、倫子の作ったご飯を食べた人たちは、なぜか皆、願いが叶って幸せな気持ちになるという噂が流れる・・・。
映画にもなったので、昨日DVDで観た。原作がちょっとお茶らけた感じになっていたが、食堂かたつむりの内装と料理をしている時の倫子のしぐさは、原作のイメージ通りだった。
DVDを観た後、また原作が読みたくなって一晩かけて読んだ。やっぱりよかった。母の亡き後、意気消沈した倫子は食堂を再開できない。でも家に飛び込んできた山鳩を焼いてその肉を食べた時、「美味しい」と自然に声が出た。
その時、倫子は気が付いた。
「料理を、捨ててはいけない
心からそう思った。
だからまた一から料理を作りはじめよう、と。
身近な人に、喜んでもらえる料理を作ろう。
食べた人が、やさしい気持ちになれる料理を作ろう。
たとえちっぽけな幸福でも、食べた後、幸せになる料理を、これからもずっと、作り続けていこう。
ここ、食堂かたつむりの、世界にひとつしかない厨房で。」
この言葉がこの本の最後だ。食べることは愛することであり、生きることである。そんな仕事を私もまたこの小さな厨房で続けていこうと思う。
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Comments
憂ちゃんありがとう。
原作、ぜひ読んでみて。
すごくいいですよ~(個人的には映画よりもいいと思ってます)。倫子のやっていることが私と重なる・・・とこの本を読んだ何人かの友達から言われました。
でも私、どちらかというと倫子よりもあのぶっ飛んでるお母さんの方に似ているのかも・・・?と秘かに思っているのですが(笑)。
さて、憂ちゃんが読んだらどう思うかな?感想教えてね!
Posted by: 風楽 | April 02, 2011 09:24 PM
この映画観に行きました~!
観て良かったって思った記憶してます♪
今度は、原作も通勤のお供に読んでみます!
Posted by: 憂 | April 02, 2011 02:28 PM