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August 16, 2011

現代版モーゼの十戒

友達から進められて面白い本を読んだ。「山は市場原理主義と闘っている」(安田喜憲著 東洋経済新聞社)。タイトルだけ見たら自分では決して手に取らない類の本だ。サブタイトルは「森を守る文明と壊す文明との対立」。ここで少しだけページを開いてみようと思った。
でも意外や意外、読み進めていくといつも自分でも考えていることが、明確な論理でまとめられており夢中になって読んでしまった。
国土を山河が貫き海に囲まれた美しい日本列島は縄文の時代から大地に祈りを捧げてきた。太陽を山を川を・・・この地球に生きとし生けるものの命に対して畏敬の念を抱いていた。さらに自然と向き合い、自然(山)の中で修業を行い、心の平安と悟りの境地を求めていったのが日本人の宗教観のルーツだ。
最澄や空海が比叡山高野山で修行をし、神仏習合の密教の世界を誕生させ、その後、法然、道元、日蓮、親鸞など開祖たちも皆、山に入った。それだけ山(自然)への祈りが宗教の原点になっているということだろう。天と地のかけ橋となる山や木は聖なるものとみなされ、それをあがめ畏れ敬うことから山岳信仰が発展していった。
それに対し、砂漠の民は山々よりも夜空に輝く月や星をあがめ一神教というものを創造していった。つまり風土は宗教の基礎となっていくのだ。
また東洋の稲作漁撈民と西洋の畑作牧畜民を、その食文化の違いから、「美と慈悲の文明」と「力と闘争の文明」とに分別し、何をどのように食べてきたかということが民族性をも育てていくと語っている。
その一例として脳内にある神経伝達物質であるセロトニンの働きが紹介されている。
セロトニンは安らぎや弛緩、受動的な心、優しさや和らぎと深く関係しているのだが、必須脂肪酸を多く含む魚をタンパク源としている稲作漁撈民は、セロトニンが活発に働き、自ずと慈悲の心が育まれる。
これに対し、肉食はセロトニン受容体の細胞膜が飽和脂肪酸によって硬くなり、セロトニンが活発に働くことができなくなる。それが能動的、攻撃的になり、しいては「力と闘争の文明」を構築する原因となっていったのではないかと説く。
またモーゼ十戒も取り上げている。神と人間との関係、人間と人間の関係を、幸福と繁栄に導くための戒めだ。でも周囲に森がなかった砂漠の宗教には自然と人間との関係についての戒めが欠けているのだ。そこにキリスト教やユダヤ教の大きな限界があるのではないかと安田氏は語っている。
他の宗教を一切認めない一神教の人々が自分たち以外の人々を力で搾取していく。結論として世界を動かす経済システムである市場原理主義から、自然を崇拝し、共存共生を基本にした経済システムへと転換するためには、人類が山に祈る心を取り戻す必要があるとまとめられている。
自然とどう向き合うかということは、その人がどう生きるかということにつながっていくのだなと改めて思った。さらにはその国の国民性までが自然状況によって変わってくる。
でも縄文時代から生活の中で祈ることを忘れなかった私たちの祖先。山に祈る心を大切にしながら、世界を転換させていくのは日本人からだと私は思う。
Dsc09678

「現代版 モーゼの十戒」(安田喜憲「蛇と十字架」より)
①あなたは自然のなかにも神を見つけなくてはならない
②あなたは自分のためにのみ人格神を刻んだ像をつくってはならない
③あなたは自然にいつも呼びかけなければならない
④自らが安息日をとるように、自然にも安息日を与えなければならない
⑤あなたは父と母を敬うように自然を敬わなければならない
⑥あなたは自然の生き物をむやみに殺してはならない
⑦あなたは自然も家族の一員として大切に愛さなければならない
⑧あなたは自然の豊かさをふみにじってはならない
⑨あなたは自然に対して嘘をついてはならない
⑩あなたは自然を不必要に貪ってはならない

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