星野富弘美術館へ
ずっと行きたかった星野富弘美術館にようやく行くことができた。新しく開通した北関東自動車道太田藪塚インターを降り、渡良瀬川に沿って北上しながら走ること一時間。草木湖の正面に建つ緑に囲まれた美しい美術館だった。
富弘さんは中学の体育教諭だったが、赴任2カ月後のクラブ活動の指導中、頸髄を損傷し、手足の自由を失った。9年に及ぶ入院生活の中、最初は失意のどん底にいたが、キリスト教の洗礼を受け、口に筆を加えながら絵を描く喜びを知る。退院後結婚。雑誌や新聞に詩画の作品を連載するようになった。
一つ一つ丁寧に花を描き、そこに優しい言葉の詩を添えて、星野富弘さんの詩画は完成する。その作品には困難を乗り越え、感謝と共に生きている富弘さんの優しい愛があふれており、見る者の心を温かくしてくれる。
91年に富弘さんの故郷である群馬県勢多郡東村に村立富弘美術館がオープン。その後、現在の場所にコンペでデザインを募集し、柱を使わず円柱と円柱をつなぎ合わせた曲壁の新しい美術館が完成した。とても美しいデザインの富弘美術館はヨコミゾマコト氏設計で2006年日本建築学会作品賞などを受賞。
休憩室から碧い湖や木々の緑が真正面に見える。ウッドデッキに出れば野鳥のさえずりが聞こえてきて、本当に気持ちがよかった。そこにいるだけで自然と一体になれるような場所、そして富弘さんが詩の世界で表現したかったものが伝わってくるような優しい空間だった。今まで何度か他の会場で、富弘さんの展示会を見てきたが、ここで見た作品が一番印象に残った。たくさんの人たちに静かな共感が広がり、美術館の入館者は2010年に600万人を越えたと言う。実際、平日だというのに入館者は次から次へとあとを絶たず、たくさんの人たちが富弘さんの絵を見入っていた。
美術館を出た時、心に一輪、富弘さんが描いた優しい花が、ぽっと咲いたような気がした。
とても素敵な場所でした。お時間があったら、どうぞ行らしてみてください。
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