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November 13, 2012

天のしずく~辰巳芳子いのちのスープ~

私の尊敬する料理研究家辰巳芳子さんの映画「天のしずく」(河邑厚徳監督)が完成し、上映が始まったので観てきた。映画を撮影していると聞いた時から、出来上がったら絶対に観たいと思っていた。
辰巳芳子さんは日本の料理研究家の草分け辰巳浜子さんの娘。脳梗塞で倒れ、嚥下障害となり、食べる楽しみを奪われてしまった父が最後に口にできるのは心をこめて作ったスープだった。丁寧にスープを作り、季節の香りを添えて父の口に運んだ。そんな母と娘の父への愛が命のスープの根本にある。
四季折々の美しい風景を持つ日本列島で作られている農作物。日本の文化や伝統を守るために欠かせない農という営み。日本の食文化の根幹となる米と大豆の生産を守りたいと辰巳さんは全国の小学生に大豆の種を蒔き育てる「大豆100粒」運動を提唱し、参加校は300校を越えたそうだ。
自然の恵みを感謝しながらいただくこと・・・生きていく上で最も基本的で大切なことなのに、今の日本は自給率が低く食料廃棄率は驚くほど高い。食生活だけではなく食文化の乱れは人の心をもむしばんでいくのではないだろうか。食べることを通してヒトは人になっていくのだから。
食べることは生きること、そして生きることは愛すること。食を通して私たちの暮らしを見つめ直せるよう辰巳さんからのたくさんのメッセージが込められた映画だ。
辰巳さんの言葉は愛に満ち、一言一言が胸を打つ。一つのことを極めてきた人だけが持つ言葉の重さ。辰巳さんの姿は神々しく、その魂の崇高さはどの場面からも伝わってくる。そして食に携わる者としての辰巳さんの真っすぐで濁りのない精神性が作品の中に一貫して流れているので、映画を見ながら私は泣けて泣けて仕方なかった。
こんなにも愛おしい気持ちで食べ物と向き合い、長い人生の中、こんなにも心をこめて滋養があり豊かな食べ物を作り続けていられるなんて・・・・。本当に素晴らしい方だと思う。
一体、辰巳さんは今までどれだけのスープを作ってきたのだろう?そしてどれだけの人たちがそのスープを口に含み、作り手の思いにふっと胸が熱くなったことだろう。
同じ食に携わる者として、私も辰巳さんの思いを汲み取り、丁寧に心をこめて料理を作り続けたいと思った。そして作ったものに愛を添えること。いつか本当に滋味のある料理が作れるようになった時には、それを必要としている人たちに届けたい。
「呼吸と等しく、いのちの仕組みに組み込まれている、食べること。この自明は、どこまで明らかにされておりますでしょうか。すべてのいのちの仕組みは、いのちがよりよく在るよう、生きてゆきやすく在るように、想像を絶する仕組みに違いありません」。
私の大好きな辰巳さんの言葉だ。
美しい日本の農村風景の映像と共に、辰巳さんの珠玉の言葉がたっぷり詰まっている素晴らしい作品でした。ぜひご覧になって下さいね!16日までは千葉劇場でも上映しています。
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(C)2012天のしずく製作委員会

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