IKOR〜おおたか静流〜
9月に行ったおおたか静流さんのライブ以来、ずっと聴いているアルバムがある。「IKOR」(イコロ)。
IKORとはアイヌ語で「宝もの」という意味。誰の心の中にもある本当に大切なもの。
静流さんの心の中で長い間、温めてきた大切なメロディと詩。それを曲にして歌い、宝もののような思いを自分を産んでくれたお母さんと、全ての女性に捧げたい・・・そんな願いを込めて制作されたアルバムだ。
アイヌの文化研究者でありアイヌ初の国会議員になった萱野茂氏の著作の中からアイヌに伝わる古い諺と出会って感銘を受けた静流さん。
「カントロワ ヤクサクノ アランケプ シネプ カイサム」
〜天の国から役目無しに降ろされたものはひとつもない〜。
この言葉を知った時、なんて素敵な言葉なんだろうと思わず書き留めてしまった。そう。私たちは生まれてきた以上、誰にでもお役目というものがある。私も自分の人生の中でそのことはずっと意識して生きてきたような気がする。
この言葉が静流さんの中でずっと宝もののように存在していて、3.11以降、自分の心にあった思いを形にしようと、少しずつ曲を作り、完成するたびにレコーディングを重ねてきたという。10曲中9曲は静流さんのオリジナル。
ヴォーカリストとしてご自身の活動の中で伝えていきたい思いがひたひたと溢れてきたのだろう。静流さんのそんな気持ちがアルバム全体から静かに伝わってくる。
私は日本語の曲はあまり聴かない。本を読んだり、ぼーっとしたい時に歌詞が邪魔になることがあるからだ。でも不思議と静流さんの歌は日本語でもすーっと耳に入ってきて、空気のように溶け込んで邪魔にならないのだ。
だから本を読みながらでも心地よく聴ける。「IKOR」は透明な歌声が澄みわたるようにふわ〜っと広がって、聴いているととても満ち足りた気持ちになっていく。生まれてきたことの祝福と命への讃歌が根底に流れているからかもしれない。
宝箱のように素敵な紙のジャケット。レコード店では販売せずライブ会場や直販のみで販売している。その箱の中には曲に合わせた美しい写真付きの歌詞カードが10枚。
「たったひとりの女性に選ばれてこの星にたどりついたわたしたち。ちいさないのちを守りぬいた、すべてのお母さんに、心から感謝をこめて捧げます」という「たいじのうた〜Birth」は風楽でのライブでも歌って下さった。
「あたなにあいたい あなたにあいたい あなたは わたしのはじまりだから やさしさに つつまれて こころがつながる あしたは みらいへのとびらをあけるよ」。
赤ちゃんの立場からママに会える喜びと期待を歌った優しい曲だ。
コンサートの余韻に浸りながら、「IKOR」を毎日のように聴いていたら、いつのまにか秋が深まってきた。
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