野菜を信じるレシピ
私の尊敬する料理家船越康弘さんの新刊本が出た。
「野菜を信じるレシピ」〜岡山の料理宿「わら」が贈る“口福”の自然食〜(学研パブリッシング)。
船越さんの本は私にとって特別な存在だ。「わらのごはん」は料理本の中でも一番好きな一冊。以前、岡山にある「百姓屋敷わら」で行われた2泊3日の船越さんのセミナーに参加したことがある。重ね煮のお食事もおいしかったけれど、船越さんの言葉が一言一言、心に響き感動して私はセミナーの間中、ずっと泣いていた。そして料理の仕事を選んで本当によかったと思った。その後、店にお招きして船越さんに講演もしていただいた。忘れられない思い出だ。
30年以上、料理に携わっている船越さんは食べものへの感謝の言葉をいつも口に出して伝えているそうだ。教えていただいたその言葉を私も筆で紙に書き、古民家の厨房にもビオンの厨房にも貼ってある。それを唱えることが今では私にとっても厨房での日課になっている。
「食べものを変えると人生が変わる」と船越さんは言う。確かにそうだと思う。料理人として大切なことはレシピを増やすことでも有名になることでもなく、自分の精神性を高めていくことだと思う。それは食べものに感謝し、自分の生き方を食べものを通して見つめていくことだ。だから自分が食べものとどう向き合うか、どう生きていくのか、いつも試される。
船越さんの考える自然食とは「地球環境にとっても自然で調和する食事」。それは頭で「いい」とか「悪い」とか理論的に考えるものではない。作る人、食べる人の気持ちが何よりも食べものに影響を与える。いつも感謝の気持ちを忘れないこと。それが健康と幸せへの近道なのだ。「わら」のモットーである「おいしく 楽しく ありがたく」は船越さんにならって私も風楽のモットーにさせていただいた。
今回の本は重ね煮のスープやサラダ、野菜で作るスィーツなど新しいレシピもたくさん載っているが、途中にある船越さんのコラムも面白い。読んでいるとセミナーの時に熱く語っていた船越さんの姿が浮かんでくる。そう・・・食べもの、家族、幸せ、生き方・・・船越さんの伝えていきたいものはずっと一貫して変わらないのだ。
私の本棚の料理本のコーナーに素敵な本がまた一冊増えた。大切なことを忘れそうになった時は何度もこの本を開いて確認しよう。そして謙虚に原点の姿勢に戻ってそこからやり直そう。
船越さんは「魂のための食べ物を生み出す料理を作りたい」と書いているけれど、私はまず「心と体が元気になるごはん」を作りたい。
大切な言葉を今日も唱えながら。
「天地(あめつち)のお恵みと、これを創られた方のご愛念を感謝して いただきます。
この食べ物が私たちの体の中に入って 自他共にお役にたちますように いただきます」
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